構造が複雑な煙突について

煙突のある風景

今となっては、近代化の象徴と言えば高層ビルですが、かつては発展のシンボルと言えば煙突でした。
てっぺんから絶え間なく煙を吐き出すその姿は日本の工業化の未来像として、期待を一身に集めていたのです。
私の家の近所に、昔、ちいさな銭湯がありました。
営業の準備が整う昼下がりごろになるといつも煙突から白っぽい煙がたちのぼって、近くのおじいさん、おばあさんたちが洗面器片手にいそいそと集まっていたものです。
その光景が長い間続いていたのですが、私が高校を卒業した年に突然、その銭湯が店じまいをしてしまったのです。
その頃になると私のほうもずいぶん大人になって、子どもの頃のように毎日昼下がりにたちのぼる煙を見ることはなくなっていました。
もっとはっきり言えば、近所に銭湯があることさえ時々忘れかけるほどだったのです。
それでも、いざ銭湯がなくなり、煙突からもくもく上がる煙が見られなくなってしまうと、心に穴が空いたような、毎日の楽しみがひとつなくなってしまったような、何とも言えないさみしさにとらわれたのです。
銭湯のあとには間もなく、コンビニが建ちました。
買い物は便利になりましたが、時代をひとつ置き去りにしてしまったようで、やるせない気分です。